No.1005058

お父さんは、私に振り向かない! 第22話 それぞれの平日(5)

単身赴任の父親の元に遊びに来ると言い出す娘。
遂にその時が来て、娘を迎えに行く。
だが、娘の咲子の行動が、普段と何か違う気がする・・・
前回の続きです。

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2019-09-21 09:11:58 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:32   閲覧ユーザー数:32

 お父さんは、私に振り向かない!

 第22話 それぞれの平日(5)

 

 ・・・・・・

 無事、今日の作業も終わり、所内の全体夕礼が始まる・・・

 朝と同じように全体夕礼が終わると今度は部署内での夕礼が始まる。

 各個人の作業内容の報告とかはこの部署では無いが、気付いた事や言付けが有る場合は此所で発言する場合も有る。

 俺の担当部分では今日の言付けは無いので、そのまま黙って夕礼を聞いている。

 

「―――でお願いします。では、今日もお疲れ様でした!」

『お疲れ様でした!』

 

 部署内での夕礼も終わり、後は終業チャイムが鳴るまでの少しの時間は、有る意味自由時間で有る。

 特にやることは今日は無いので、俺は休憩所に向かい、あの後からメールの確認をする。

 

(何も入ってないか。なら良いが・・・)

(今日の晩ご飯は、咲子の手作り料理・・・)

(普段から母さんの手伝いはしているらしいし、大丈夫だと思うがな・)

 

 この3日間の晩ご飯作りは殆ど咲子との共同作業でも有った。

 包丁も使えるし、素麺を茹でたり、春巻きの揚げ物も普通に作っていたから、今日の晩ご飯作りも任せても大丈夫だと思った。

 

(家に帰ったら漫画の世界みたいに、『お鍋焦がしちゃった♪』とか台所が大惨事に成っていたりして・・・)

 一瞬だがそんな妄想を考える。

 

(普段の家と違い、あのアパートの台所は少し狭いからな・・・。上手にやれていれば良いが・・・)

(今日は寄り道せずに真っ直ぐ家に戻ろう・・・)

 ・・・・・・

 ・・・・・・

 大体の料理を完成させた所で、後はやる事が無いので、先ほど同じようにスマートフォンを持ちながらTVを見ている。TV画面の端には今の時刻が表示されている。

 

(18時30分か・)

 

 この時期の夕方の時間帯は、まだこの時間でも十分に明るい。カーテンから空を覗くと、空もまだ青みが掛っており、夏の夕方を演出している。

 お父さんは仕事に行っているが、世間ではお盆休み。ベランダの窓越しからは、子ども達のはしゃぐ声やその子ども達の両親の声が聞こえてくる。お盆休みを満喫しているようだ。

 ここでふっと何気なく心から湧き出ててくる・・・

 

(・・・私はこの先何を望んでいるのだろう?)

 

 昨日までの3日間は、普通にお父さんと遊んだと言うべきだろう。多少、誘惑もしたりしたが一応いたずらの範囲内だと私は思っている。しかし、お父さんは本気で捉えている雰囲気が出てきたので、今は少し後悔もしている。

 今日は留守番と言うべきか、自由な時間と言うべきか、悩む所だが、私の中では“お母さん”の日だった感じがする。

 洗濯、掃除、料理、一応一通りの家事はした・・・。満足感は無いが達成感は有る。

 

(でも、これを毎日やるとしたら何だか嫌だな・・・)

(今は楽しいと感じているが、直ぐに飽きてくる気がする。しかし、家事は毎日しないと洗濯物は溜まっていく一方だし、部屋は埃が溜まるし、料理は・・・外食や中食にすれば何とか成るかな)

(まあ、そんな事考えても仕方ないか・・・もう一つの方は・・・)

 

 私の最初の目的は達成した。

 それは、お父さんを一人占めすること。普段はそんな事まず出来ないし、お母さん、お姉ちゃんや真央がいる手前やりにくい。

 この単身赴任はチャンスだと感じた。単身赴任をお父さんは凄く嫌がっていたけど、私にとっては絶好の機会だった。

 単身赴任が始まって、私は夏休みに入って、そしてお父さんの元へ遊びに行くと決まった時、真央も来たいと言ったが、別の大事な用事が重なったため、真央はそっちの方を泣く泣く取った。

 その結果、私はお父さんを独占出来て目的は達成できたが、やり過ぎ感も同時に出て来てしまった。

 

(これ以上やるとお父さんの場合、軽いタッチやリアクションで終わらずに、本気で来そうだからな)

(昨日も私を抱きしめようと仕掛けたし、私はもっと軽いのを望んでいるんだよな)

 

「・・・はぁ~」

 軽いため息をつく。そして、何かに気がついた!

 

(きっと私求めているのは、外国の家族映画に出てくる。仲睦まじい家族を理想にしているんだな!)

(オーバーアクション、ハグ、軽いキス、そう言ったのを実は望んで要るかも知れない)

(今の状況はあまり良く無さそうだし、思い切ってお母さんに電話してこっちに来て貰うか? でも、仲の良さを見せつけられても、何だかイラッとしそう・・・)

 

 お父さんとお母さんは本当に仲が良い。些細な争いは有るが、大きな喧嘩やもめ事はまだ見たことが無い。時々『年考えろよ!』と感じる時も有る。

 お父さんは、普通のお父さんだと思うが(私の中では)、お母さんはあの年でも美人? で近所の評判も良くて、周りからも慕われている。自慢のお母さんと言いたいが、口うるさいのが玉に瑕だ。

 

(アレをここで見るぐらいなら、まだ、今の状態の方がマシかな・・・。私が誘惑やイベントを起こさなければ、手を出してこない感じだし・・・)

(お父さんの事、好きなんだけど、やっぱり異性としての関係は持ちたく無いな・・・)

 

 ベランダの窓辺で色々と考えていると、道の遠くから見慣れた車が家に近づいてくるのに気付く。

 

(あっ、あれ、お父さんの車だな!)

(・・・・・・!)

 

 パン! パン!

 

 私は気合いを入れるため。頬を両手で軽く叩く。

 

(とにかく、今の生活を楽しもう。望まぬ展開に成ったらその時はその時だ!)

(さて、料理の再開だ!!)

 

 出来たてと温かい料理を出せるよう、私は再び台所に向かった。

 ・・・・・・

 

 

 第22話 おわり

 第23話につづく


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